【問題 7】

 心理検査に関する次の記述の中から,正しいものを一つ選びなさい。

a. Benton, A. L. が開発した聴覚記銘検査は高次脳機能検査の一つであり,聴覚認知,聴覚記銘,聴覚構成能力を評価する。

b. Goodenough, F. L. は,子どもは見ているものよりも知っているものを描くという事実から, 風景画を用いた知能検査を開発した。

c. Binet, A. がSimon, T. と協力して作成したWISCでは,精神年齢という概念が初めて導入された。

d. Kraepelin, E. は,精神医学者であったが心理学にも興味を示し,臨床で使える心理検査用具の開発に力を注いだ。

e. Bender, L. は,脳の器質的障害,精神障害者などの視覚・運動型におけるゲシュタルト機能の視点から心理検査を開発した。


『臨床心理士資格試験問題集4』(誠信書房)より




  主に脳の発達と関連する神経心理学領域で用いられる心理検査に関する設問である。これらは代表的な心理検査であり,その概要は臨床心理士として知っておく必要がある。心理臨床職にある者として保有すべき心理学的知識の有無を確認する。

a 誤り(×)。文章中の「聴覚」はすべて間違いで,すべて「視覚」に置き換えれば正答となる。日本では視覚記銘検査日本版として知られている。検査は10枚の幾何学図形から成る。失語症患者の記憶の評価に有効とされる。

b 誤り(×)。「風景画」ではなく,「人物画」が正答。子どもなら,人の姿は誰でも等しく知っているはずという前提がある。施行にあたっては,人物の絵の描画から知能を推定するという本検査がもつ
意図は気づきにくい。しかし本検査で算出される知能は大雑把な推定であり,本検査で知能の綴密さを測ろうというのは無理がある。本検査は視覚-運動系の発達段階を捉えようとするため,算出された精神年齢や知能指数はとくに視覚-運動系の一般児童の平均的発達水準と比較するのに役立つ。

c 誤り(×)。 Binet, A. が僚友の医師Simon, T. の協力を得て1905年に作成した知能検査は,ビネー・シモン知能検査法(Binet-Simon intelligence scale)である。本検査は,世界で初めての知能検査とされる。

d 誤り(×)。クレペリン精神作業検査はドイツの精神医学者Kraepelin, E. によって発案され内田勇三郎が発展させた人格検査である。被験者に,一列に並んだ数値を連続加算する作業を繰り返させ,それによって得られる作業速度の変化を示す曲線(作業曲線) を評価する。作業曲線に性格が反映するとしたのはKraepelin,E.の発想であるが,検査の具体的な手続きの開発は内田による。

e 正しい(○)。 1938年, Bender, L. 女史によって「視覚・運動ゲシュタルト・テストおよびその臨床的使用」と題するモノグラフが発表された。Bender, L. は,当時普及していた視覚的課題から,図形を模写させる「視覚・運動的」という課題へと変化させた。臨床への糸口はこの点において認められる。


『臨床心理士資格試験問題集4』(誠信書房)より


【橋口(2018)追記】
 内田クレペリン検査,ベンダーゲシュタルトテストは,ともにベスト20圏外であるが,質問紙法,投映法,作業検査法と並べされることも多く,またブループリントには「作業検査法」の文字があるので,取り上げた。

・作業検査法は,何らかの作業課題を課すことで,対象者を評価する形式のものである.一桁の数字を連続加算することで作業曲線を見出しパーソナリティを検討する内田クレペリン精神作業検査は,その代表例である(p. 63).『公認心理師国試必須センテンス』(学研プラス)


<ベントン視覚記銘検査>
Benton (ベントン)が開発。幾何学的図形の描かれた図版を1枚ずつ一定時間 (5~15秒)提示して覚えてもらい、その後、用紙に再生してもらう。再生までの時間は、即時 (即時再生)と15秒後 (遅延再生)があり、脳疾患の可能性を診断する。主にコルサコフ症候群(アルコール依存症による健忘、作話、見当識障害)とブローカー失語症を調べるのに用いらる(p. 174を改変)。『臨床心理士試験徹底対策&予想問題集』(ナツメ社)

→ 機10枚,供10枚,掘10枚,からどれか1つを選ぶ(提示時間が,5秒版,10秒版,15秒版だったような)。

→ 正確数,誤謬数をみる。

→ コルサコフ諸侯群では,新規に獲得した情報を保持する能力が損なわれる(そこを補うために作話をする)。

→ 『公認心理師現任者講習会テキスト』では高次脳機能障害の記憶障害の検査として取り上げられている。なお,同じところには以下の検査も取り上げられている。

<三宅式記銘力検査>
 聴覚性言語による記銘力検査で、三宅鉱一が開発した。被検者に、単語対 (例:人一猿) 10組を読んで聞かせ記憶してもらった後、片方の単語を提示し、もう一方を想起してもらう。単語対は、人一猿のような有関係対語と、谷一鏡といった無関係対語のそれぞれ10組からなる(p. 174)。『臨床心理士試験徹底対策&予想問題集』(ナツメ社)

→ こちらは聴覚

<リバーミード行動記憶検査>
 記憶障害の重症度を調べる検査で、Wilson, B. (ウィルソン)らが開発した。単純な記憶検査とは違い、日常より起こり得るようなシチュエーションを想定したものも含む。例えば、被検者の持ち物を預かって隠し、検査終了時を想像させ、返すよう要求してもらうといった、過去ではなく未来についての展望記憶について問う。24点満点中、21点以下で軽度、16点以下で中等度、9点以下で重度の目安になる(p. 174)。『臨床心理士試験徹底対策&予想問題集』(ナツメ社)

→ 展望記憶がポイントかも

も取り上げられている。

<内田クレペリン検査>
Kraepeline(クレペリン)の連続加算作業研究にヒントを得て,内田勇三郎が開発。

→ 作業でパーソナリティが判る(クレペリン談),具体的な手続きを開発(内田)。

・ランダムに並んだ1桁の数字を連続して加算して下1桁を記入してもらう。

15分間作業(前半)

5分休憩

15分間作業(後半)

・1分ごとの作業量を折れ線グラフにする。

・健常者の定型曲線と比較する。

・定型曲線の3つの特徴

前半も後半も最初の1分間の作業量が最も多い(初頭努力)。

前半では2分目以後作業が低下していき、6〜10分頃から再び上昇する。つまり、U字またはV字のカーブを描く。前半15分目で1分目に次ぐ作業量を示す(終末努力)。

後半の1分目の作業量が全体で最大になる(休憩効果)。後半は全体にやや下降気味の曲線を描くが、前半より全体的に作業量が上回る。

・作業量の安定性,誤謬率,作業量の変化,から人格や適性を判定する。

曲線:動揺率が上がると情緒不安定(←この辺がパーソナリティ),尻上がりに上昇すると粘着気質など。

作業量:処理速度(←この辺が適性とか?!),意志の強さなど。

知能精神構造の特徴の判定まではできない。

疾患特有の曲線はないので,診断補助には不向き。

<ベンダーゲシュタルトテスト>
Bnder(ベンダー)が開発。

9つ幾何図形を模写するテスト。

→ 図形は、ゲシュタルト心理学の創始者であるWertheimer (ウェルトハイマー) の原案によるものとBender(ベンダー)が改作したものがある。

視覚一運動ゲシュタルト機能(例:目と手の協応)の描写の正確さ,混乱度,描画方法から成熟度を検査する。

→ そこから脳器質的障害の有無を評価。

→ 統合失調症の有無も評価できる。

→ 子どもの場合,発達の成熟度を評価できる。

→ 最もポピュラーなのはパスカル・サッテル法(11歳以上)で,自我強度や情緒的適応度を分析する。他には模写からの連想を分析する投映法としてのハット法,発達項目から情緒指標を分析するコピッツ法(5歳〜10歳)などがある。


<参考文献>
『臨床心理士試験徹底対策&予想問題集』(ナツメ社)

『心理アセスメントハンドブック 第2版』(西村書店)