おそらくであるが,以下のところではないか。

最近何をするにも気力が続かず,仕事はもちろん日常生活も意欲がわかず,ひいては職場不適応となり,うつ状態を改善したいと心理相談室を来談した中年男性のクライエントである。担当したカウンセラーはインテーク面接や心理テスト等を実施した上で,中年期の心理的課題を抱えたケースという見立てをし,うつ状態もそれが原因となっていると判断した。また,職場の雰囲気が少し変われば,クライエントのうつ状態も改善されるはずだと考え,当分の間,クライエントの気持ちを共感的に受容する来談者中心療法によるカウンセリングを行うことを決めた。しかし,半年以上も経過するが,クライエントの状態は改善するどころかますます悪化した。クライエントには妻と4歳と2歳になる子がいるが,妻は子どもの養育に手がかかるだけでなく,クライエントヘの日常の対応に疲弊をし,ついには子どもを連れてクライエントのもとから別居するようになった。そんな家庭環境の状況も重なり,その頃にはクライエントの体重が激減した。そこで,クライエントはしぶしぶ医療機関を受診したところ,脳に腫瘍が発見され,それが意欲を喪失させ,うつの症状が出ていた原因であったのではないかと医師から指摘された。この事例のように,心理的アセスメントを行う際に,心理システムだけでアプローチをすることは危険であり,生物システム,社会システムなどの視点を交えながら,それぞれがどのように関連しているのかを多元的にとらえていくことが必要である(p. 178)。*色付け,下線は引用者。『公認心理師現任者講習会テキスト』(金剛出版)

これはあくまでも「聞くだけではダメですよ」という訓示だったと思うのだが,ちょっと口じゃなかった指が滑ったというところなのではないか。とはいえ,2019年版では改訂されるとは思うのだが。