【問題 96】(事例問題)

 「自分のことを知りたい」というLさんの希望と母親の依頼を受け, P-Fスタディを実施した。その結果は, GCR = 53%は中学3年生女子の標準 (61%) と比較してやや低かった。主要反応は E (7) > e (5) > I(3.5) の順であった。E反応は中3女子の標準(4.5)よりも高く, E'は 0, mは 0.5と低かった。超自我因子のEとIはそれぞれ1つずつ,また (M-A) + I = 5.5 (23%) は中3女子の標準(36%)と比較して低かった。反応転移としては,前半に強調されていたe反応が後半では減少し, M-A 反応が前半まったく見られなかったが,後半は4つに増加するなど強い転移が認められた。これは,テスト中におけるLさんの心理的構えが変化したことを意味している。

 次の文章の空欄 [ A B C D ] に該当する語句として,下のa〜eの組み合わせの中から,正しいものを一つ選びなさい。

 GCRの値から[ A ]が著しく低下しているとは認められないが,[ B ]が同じ年代の入の標準より高く,他責逡巡反応や無責固執反応は少ないことから,直接他者に攻撃を向ける傾向があることが示唆される。一方,反応転移の分析から,最初はフラストレーションを[ C ]によって解消しようとするが, 次第に[ D ]によって解決しようとする傾向が強くなることがうかがえる。








A 集団順応度GCR(Group Conformity Ratig)は成熟度ではなく,集団順応度を意味する。標準集団の典型的反応被験者の反応とがどの程度一致するかを大まかに示す指標であり,GCRの値は被験者の欲求不満耐性の一つの尺度と考えられる。

B 他罰反応。同じ年代の人より高かったのは「他罰反応」(E反応)である。因みに,選択肢にある「自罰反応」はI反応,「無罰反応」はM反応と記述される。

C 他者に依存すること。前半に強調されていたe反応が後半では減少し,前半はまったく見られなかったM-A反応が後半は4つに増加したという反応転移の理解を問うている。前半に強調されたe反応とは他責固執反応のことで,他人に依存してフラストレーションを解消しようとする反応をいう。e反応の強調とは,つまり相手に依存することによって問題を解決しようとする心理機制が強く働いでいることを示している。

D 他者を弁護許容すること。後半に出現したM-A反応は無責反応と呼ばれ,フラストレーションの原因は誰にあるわけでもなくそもそも不可避なものだと考える反応である。この反応は,他者からの愛情を失うことを恐れることを意識した妥協の動機が働いており,自分の非を認めたくないが相手からも憎まれたくないという気持ちから,「他者を弁護許容する反応」とも呼ばれている。防衛機制では「抑圧」が関連する。因みに,「自己を弁護する反応(Iアンダーバー反応),「自己を罰する反応(I反応)」はM-A反応とは異なる反応である。





【橋口(2018)追記】

 公認心理師試験には出ない可能性が高いが,「もしも」のときに備えて取り上げてみた。例年に比べて難易度が高い問題だといえるだろう。例年であれば,<概略>と<実施方法>の(1)のところの知識だけで解けているはずなので,時間がない人は,<概略>と<実施方法>の(1)だけ理解することをおすすめする。

<概略>
 P−Fスタディ (Picture-Frustration Study、絵画欲求不満テスト)【使用頻度10位(小川,2011)】は、Rosenzweig, S.(ローゼンツヴァイク) が、自らのフラストレーション(欲求不満)耐性理論に基づいて開発した投映法(*制限的投映法,完成法的投映法)である。その理論は、欲求不満状態に対する反応を明らかにすることで、個人の精神力動を明らかにできるという考えに基づく。Freud, S. (フロイト)の精神分析学的諸概念を実証的に検証する意図のもとに打ち立てられた。

→ フラストレーションとは,欲求が妨害や障害によって充足できずにいる状態。

→ フラストレーション耐性とは、フラストレーション状態での我慢強さと捉えることができる。

→ P-Fスタディは、TAT言語連想法を参考にして開発された。

→ 児童用,青年用,成人用がある。

<実施方法>
 P-Fスタディは、2人の人物が描かれた24枚のイラストからなる。フラストレーションを生じさせる相手方の発言に対して、もう一方の人物がどう返答するか、被検者に、絵のなかの吹き出しに書き入れてもらう。各々の絵の状況は、

フラストレーションの原因が他者にある自我阻害場面と、

フラストレーションの原因が自己の内部にある超自我阻害場面

に大別される。教示は、吹き出しのなかに言葉を書き込んでもらうこと、最初に思いついたことを書いてもらうこと、書き直したい時は消しゴムで消さずに線を引くことを伝える。

(1)反応の分類
 被検者の反応は、フラストレーション状態で生じる、アグレッションの方向(他責、自責、無責)と、アグレッションの型(障害優位型、自我防衛型、要求固執型)から、それらをかけあわせた9分類(非定型を合わせると11分類)になる。アグレッションの方向において、

他責的(Extraggresion: E-A)とは他者を責める傾向(「投射」)

自責的(Intraggression: I-A)とは自分を責める傾向(「置き換え」,「感情分離」,「反動形成」)

無責的(Imagression: M-A)とは誰も責めない傾向(「抑圧」)

のことを指す。

一方、アグレッションの型において、

障害優位型(Obstacle-Dominance: O-D)とは障害の指摘に重点を置く反応型

例:「この帳簿の付け方は何ですか」と咎められて、「他にもたくさん仕事があったので」と答える

自我防衛型(Ego-Defense: E-D)とは自我を強調する反応型

例:「この帳簿の付け方は何ですか」と咎められて、「私はきちんと付けたはずです」と答える

要求固執型(Need-Persistence: N-P)とは問題解決を重視する反応型

例:「この帳簿の付け方は何ですか」と咎められて、「ではもう少しお時間をください。やり直します」と答える

になる。なお、P-Fスタディでいうアグレッション (aggression) とは、“攻撃性”よりも広い‘‘主張性”という意味で使われ、“フラストレーションに対する反応の総称”を意味する。

(2)結果の分析
場面別評点記入欄に記入
スコアリングをしてGCRを算出する。

『投影査定心理学入門』(放送大学出版会)p. 122

プロフィール欄に記入
アグレッションの方向と型

『投影査定心理学入門』(放送大学出版会)p. 125

超自我因子欄に記入
自己の好ましくない行為や動機に対する態度と関連した指標。

『投影査定心理学入門』(放送大学出版会)p. 126

 反応転移分析欄に記入
テストの途中で心の中に防衛的な気持ちが生じた場合はテストの前半と後半で違った反応が生じる


<参考文献>
『臨床心理士試験徹底対策テキスト&予想問題集』(ナツメ社)

『心理アセスメントハンドブック』(西村書店)

『投影査定心理学入門』(放送大学出版会)