【問題35】
 
 図に示したMMPIのプロフィールから読み取れる内容に関する次の記述のうち,正しいものに○,誤っているものに×をつけた場合,下のa〜eの組み合わせの中から,正しいものを一つ選びなさい。

MMPI

A. 自分をよく見せようとする構えが強く,内心では困っていても,それを否定する傾向がある。

B. ものの考え方は独特で猜疑心や被害感が強く,被害妄想的な物事の受けとめ方をしやすい。

C. 怒りの感情を表に出せず,受動的攻撃性が現れやすい。

D. 心的なエネルギーが乏しく元気のない状態であり,対人関係では自分の殻に閉じこもりやすい。








 MMPIの各尺度の意味やプロフィールの意味について理解しておくことは臨床心理士として必要な力である。MMPIプロフィールの意味を理解する実践力を問う問題である。

A 誤り(×)。妥当性尺度の解釈に関して, L尺度とK尺度が低い山形の配置は,「援助を求める叫び」とも呼ばれており,自分をよく見せようとする構えは強くない。また,自分を否定的に捉えて,心理的苦痛を感じている場合に生ずるとされている。

B 正しい(○)。  Pa尺度とSc尺度で高得点を取っており,猜疑心の強さものの見方が独特であることが示されている。

C 誤り(×)。  Pd尺度とPa尺度が高く,反社会的な構えや対人面での不信感や猜疑心の強さを示している。しかし,Mfが男性的な傾向を示しているので,受動的攻撃性を表しているとは考えられない。

D 正しい(○)。 Ma尺度が低いことからは心的なエネルギーが乏しく,元気のない状態であることが示されており,さらに, Si尺度が高いことから社会的内向で入づきあいを好まない傾向が示されている。



【橋口(2018)追記】*第1回公認心理師試験に出題されました。

MMPIも公認心理師試験に出る可能性は未知数であるが,臨床心理士資格試験にはよく出てくるので,取り上げた。これは難しい方の問題だと思ったが,解説に便利そうだったので,選んでみた。時間がない人は,作成者,項目数,妥当性尺度の内容,そしてできれば臨床尺度(←各項目の内容は無視)のプロフィールの型だけ理解しておくと良いかと。

<概略>
・MMPI (Minnesota Multiphasic Personality lnventory: ミネソタ多面人格目録)【使用頻度18位(小川,2011)】は、ミネソタ大学のHathaway, S. R.(ハザウエイ)と McKinley, J. C. (マッキンレイ)によって作成された検査。

・原版では566項目、日本版では550項目の質問から成る(カード式と冊子式が刊行されている。冊子式はタイプAが項目・回答一体型,タイプBが項目・冊子分冊型の2タイプがある)。

・もともと、精神医学的な診断を下すための客観的検査として開発されたため、質問項目は特定の人格理論ではなく、臨床実践上の経験に基づいて作成。

・「当てはまる」「当てはまらない」のどちらかを選択する2件法で回答。

・日本版は15歳以上の健常集団で標準化されている。

→ どうしても決められない場合にのみ「どちらでもない」で回答可。しかし「どちらでもない」は10個以下にするよう教示しておく。

・結果は,各尺度得点を,平均50標準偏差10T得点に換算し,横軸に各尺度,縦軸にT得点を表したプロフィールを作成する(70点を超えると高得点)。

・MMPIの質問項目は、精神医学的な病理群と健常群を弁別できるかどうかによって選定されている(因子分析もα係数の算出もやっていない)。

MAS(顕在性不安尺度)やES(自我強度尺度)のようにMMPIから質問項目を抜粋するかたちで作成された検査もある。

妥当性尺度(4個):被検者の回答が歪曲されていないかなどを発見し、補正するための尺度

・?尺度:「どちらでもない」と回答した数。30個以上で妥当性低下。*教示では10個以下にしてくれと言っているので,あまり意味はないらしい(笑)。

・L尺度(ライ・スケール):自分を社会的に望ましい方向に見せようとしていないかどうかを調べる尺度

・F尺度(フリークエンシー・スケール):めったに「はい」にならない選択肢(10%以下)に「はい」と回答した頻度。高得点の場合,教示や文章の誤解,非協力,詐病,援助を得ようとする態度,精神症状の急性症状,心理的混乱などを示す。

・K尺度(コレクション・スケール):受験態度が欺瞞的か,防衛的か,を調べる尺度。

*L50未満,F65超,K50未満(「形」的には山型になる)で「助けを求める叫び」。自らの諸問題について援助を望むあまり症状を誇張して訴える。

臨床尺度(10個):質問項目を内容別に分類したもの

Hs(心気症)Hypochondriasis(ハイパカンジュアイアシス)

→ 高得点:心気的、身体不調を訴えることによる他者操作

→ 低得点:楽天的

D(抑うつ)depression

→ 高得点:抑うつ

→ 低得点:社交的

Hy(ヒステリー)hysteria

→ 高得点:身体症状による責任回避,洞察欠如

→ 低得点:萎縮して周囲に同調的

*,鉢が高く,△低い型は,形的にはV型になるので転換Vとされる。心の問題を身体症状へ転換し社会に受容されやすくする機制を反映。

Pd(精神病質的偏倚)psychopayhic deviate

→ 高得点:反社会的または非社会的な犯行と敵意(サイコパス傾向!?)

→ 受動的・同調的

Mf(男性性・女性性)masculinity-femininity

→ 高得点:男性 女性的な性格や態度,受動的で主張性が乏しい
      女性 女性らしさにこだわらない

→ 低得点:男性 男性らしさへの自信のなさから“男らしい男”にこだわる
      女性 “女らしい女”にこだわる

Pa(パラノイア)paranoia

→ 高得点:猜疑心や独善傾向

→ 低得点:適応的か,対人的に過敏かどちらか

Pt(精神衰弱)psychasthenia(サイカスシーネイア)

*恐怖症,強迫観念等をまとめた概念。

*(要するに「不安」を測定しているものらしい)

→ 高得点:緊張感・不安感が強い

→ 低得点:情緒安定,自分に満足

Sc(統合失調)schizopherenia

→ 高得点:奇妙で風変わり,疎外感

→ 低得点:現実的

Ma(軽躁)hypomania

→ 高得点:活動性が高い

→ 低得点:活動性が乏しい

(0)Si(社会的内向)social introversion

*インチュアヴァージュン:内に曲げること

→ 高得点:内向的

→ 低得点:社交的


追加尺度として標準プロフィールに補足して用いられるものA(不安尺度),R(抑圧尺度),Es(自我強度尺度)がある。

*´↓が高いと右下がりプロフィールになり神経症傾向を示す。

* 0全てが70超だと浮揚プロフィールになり境界例を示す。

*Ν┃△高いと右上がりのプロフィールになり精神病傾向を示す。


参考文献
『臨床心理士試験徹底対策テキスト&予想問題集』(ナツメ社)

『心理アセスメントハンドブック 第2版』(西村書店)