1995年:脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について

 長時間労働や仕事のストレスなどの過重労働により脳・心臓疾患を発症し,労災が請求される事案において,厚生労働省は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(1995年)という通達を示した。
 認定要件となる業務による明らかな過重負荷には,^枉錣塀侏荵 (業務上の重大事故など)による著しい精神的・身体的負荷,短期間の過重業務,D拘間の過重業務があるとされている。特に,長期間の過重業務の判断については,発症前1カ月間におおむね100時間または発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって,1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は,業務と発症との関連性が強いと評価できるとされている(p. 120)。

<橋口コメント>
まず,脳と心臓という身体が認定されるようになった(身体の認定基準)。

2011年:心理的負荷による精神障害の認定基準

 業務による心理的負荷を原因として精神障害を発病し,あるいは自殺したとして労災請求が行われる事案が近年増加していることを踏まえ,「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(1999)が示され,業務上により精神障害を発病,あるいは自殺した労働者に対する労災補償が行われるようになった。この指針は,数回改正され,後に「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2011)が示された(判断指針は廃止)。
 認定要件は,‖仂歇隻 (ICD-10のF2〜F4) を発病していること,対象疾病の発病前おおむね6カ月の間に,業務による強い心理的負荷が認められること,6般外奮阿凌翰的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないことである。なお,恒常的な長時間労働(月100時間程度とる時間外労働)が認められる場合,心理的負荷の判断が一段階高く評価される(p. 117)。

<橋口コメント>
ここで「心」が認定されるようになった(の認定基準)。配置の関係上,テキストでは,身体,心の流れがつかみにくい記述になっている。

2014年:過労死防止対策推進法

 法律では「(1)業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡もしくは(2)業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又は(3)これらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害」を過労死等と定義し,過労死等の防止のための対策を定めている。政府は「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を定めなければならないとし,過労死等の防止のための対策として…敢左Φ翕,啓発,A蠱迷寮の整備等,ぬ唄崔賃里粒萋阿紡个垢觧抉腓魑定している(p. 120)。

<橋口コメント>
ここで,身体の双方を加味したものが出てくる。ブループリントに出てくる法律である。(3)は,過労死はしていないが,「防止」ということで,過労死直前とみなすということではないか。

以下は,公認公認心理師が絡みそうで重要なものの復習である。

2014年:安衛法改正

 近年の労働者が職場から受けるストレスの状況を鑑み,安衛法が改正(2014年)され,安衛法第66条の10第1項において,事業者は,労働者に対し,厚生労働省令で定めるところにより,心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならないとされた。これがストレスチェック実施の義務化である(*事業者は「行う」のは義務だが,労働者が「受ける」のは義務ではない)。
 ストレスチェック制度の目的は,労働者自身のストレスへの気付きや対処の支援によるメンタルヘルス不調の一次予防(未然防止)である。さらに,その中でストレスの高い者を早期に発見し,医師による面接指導につなげ,一次予防を行うことも目的としている。ストレスチェックは,常時50人以上の労働者を使用する事業場で1年ごとに1回の頻度で行うことが義務付けられている(50人未満は努力義務)。実施者は医師保健師または所定の研修を修了した看護師もしくは精神保健福祉士であり,現時点(2017年)では公認心理師は含まれていない(*)。ストレスチェックに用いられる検査には/場における心理的な負担の原因,⊃歓箸亮覚症状,B召力働者(上司,同僚など)による支援に関する項目を含むこととされ,標準的には国が示す「職業性ストレス簡易調査票の使用が望ましいとされる。
 ストレスチェックと面接指導についての流れを図1に示す。大まかに「実施前の準備」,「ストレスチェック実施」,「面接指導」,「集団分析」の4つに分かれる(*PD「C」Aを文字ってP(プラン)D(ドゥ)「G」(ガイド)A(アナリシス))。ストレスチェックで高ストレス者と選定された労働者が希望した場合,事業者は医師による面接指導を行わなければならない。その後,事業者は医師から就業上の措置に関する意見を聴取し,必要に応じて,就業上の措置(労働時間の短縮など)を講じることになっている。事業者は,労働者の検査結果の不正入手,結果に基づく不利益な取扱いを禁じられている。
 また,事業者は,結果の集団分析結果から,職場のストレス要因を評価し,職場環境の改善につなげ,ストレス要因の低減に努めることとされている。なお,集団分析は努力義務に留まる(pp. 118-9)。

(*)2018年,公認心理師も含まれることになったが,実施するには研修を受ける必要がある

<橋口コメント>
ブループリント用語である上に,おそらく必ず出るであろうところであることは間違いない。

1947年:労働基準法

労働基準法
(1947)は,労働条件の最低基準を定めた法律であり,賃金,労働時間,休憩,休日,時間外・休日労働,深夜労働,年次有給休暇,解雇の制限などについて規定している。時間外・休日労働は労働基準法では禁じられているが,労」(動者)と「使」(用者)の「協定」労働基準法第36条に基づくことから36(さぶろく)「協定」と呼ぶ。>を結び,行政官庁に届けた場合には,協定の定めにより,時間外・休日労働をさせることができる(p. 113)。

<追記>
精神障害の業務上外の判断には,労働時間が重要な要素を占める。労基法第32条において,「使用者は,労働者に,休憩時間を除き1週間について40時間を超えて,労働させてはなら」ず,また「1週間の各日については,労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならない」と規定されている。ただし,使用者は, 事業場の労働者の過半数で組織する労働「組合」または 労働者の過半数を代表する労働「者」と協定を結び,これを行政官庁に届け出れば,第32条等の規定にかかわらず,「その協定で定めるところによって労働時間を延長し,又は休日に労働させることができる」(第36条1項)。この労基法第36条の規定に基づく労使間の協定(俗に「36(サブロク)協定」と呼ばれる)によって,時間外労働(残業や休日出勤)が可能となる。かといって,36協定で時間外労働時間を自由に決められるものではなく,労基法第36条第2項に基づき厚生労働大臣が労働時間延長の限度等を定めている。例えば,1カ月単位の時間外労働協定では,45時間が限度である。ただし,特別の事情が生じたときは,その都度労使間で定める手続きを経て,限度時間を超える労働時間の延長ができる(p. 199)。『関係行政論』(遠見書房)

<橋口コメント>
労働基準法第36条に基づく労使協定=サブロク協定

その都度の手続きを経れば例の「定額働かせホーダイ」も可能ということ?

*ページは『公認心理師現任者講習会テキスト』(金剛出版)