職業倫理的な責任について概説できる。

・職業倫理的な義務・責任は[ A ]的義務よりも広範囲にわたる。また先述のように,[ B ]倫理と[ C ]倫理の二側面があることを踏まえ,公認心理師は,自らの専門的な知識・スキルをもって,積極的に他者の幸福・福祉・安寧に寄与し,他者がより豊かな生活を送ることができるよう,働きかけることが必要である。

職業倫理な秘密保持と法的な秘密保持の違いが説明できる。

・法的な意味での「秘密」とは・・・本人が隠しておきたいと考えるだけではなく,隠すことに[ D ]のある事柄が法的な保護の対象となる「秘密」と定義されている。一方,職業倫理的な「秘密保持」とは,相手が専門家に対して完全なる[ E ]を有しており,その[ E ]を基にして打ち明けた事柄を,相手を裏切ることのないよう,誰にも漏らさないことを指す (金沢, 2006)。ここには秘密の[ F ]についての判断は全く含まれない。職業倫理的秘密保持の方が法的な秘密保持よりも[ G ]のである。

公認心理師の法的義務と職業倫理の関係を説明できる。

・法的義務と職業倫理的責任は,現実場面においてどちらも複雑な判断を要求される事柄であり,単に概念的知識を有しているだけでは対応できない。公認心理師は,適切な判断と行動ができるよう,教育研修を通じて[ H ]を身につけなければならない。


『公認心理師現任者講習会テキスト』(金剛出版)より




A.法

→ 法と職業倫理はどちらも社会的規範である点は共通しているものの,いくつかの重要な点で違いがある。まず,法は国家権力を背景に持ち,最終的に国家の強制力が法の規範を実行することを保障している。一方,職業倫理とは,ある特定の職業(または職能)集団が自分たちで定め,その集団の構成員間の行為,あるいは,その集団の構成員が社会に対して行う行為について規定し,律する行動規範であると共に,現実の問題解決の指針となるものである。

B.命令

→ 「しなければならないこと」,「してはならないこと」という最低限の規準に従って行動するレベル

C.理想追求

→ 職業倫理原則についての理解の上に立ち,専門家として目指す最高の行動規準を目指すレベル

D.実質的利益

E.信頼

F.価値

G.厳しい

H.職業倫理的スキル


【補足】
このパートでは,職業倫理の7原則が挙げられている。その中の第3原則:相手を利己的に利用しない。
第5原則:秘密を守る。について詳述してある。

第5原則については,41条のところで書いたので,ここでは第3原則について書いておく。

クライエントは自身にとって最善の対応を受ける権利を有しており,公認心理師は,公認心理師側の利益のために行動することは禁じられている。したがって,利益誘導と解されるような行為(例えば,リ
ファーの際に,特定の機関(公認心理師自身が勤務している別の相談機関)にクライエントをリファーする)は行ってはならない。

この原則に関する状況として,多重関係の問題が知られている。多重関係とは,公認心理師が複数の専門的関係の中で業務を行っている状況だけではなく,公認心理師が,専門家としての役割とそれ以外の
明確かつ意図的に行われた役割の両方の役割をとっている状況
を指す。これらの役割・関係が同時に行われる場合も,相前後して行われる場合も,両方が多重関係に含まれる 。例えば,公認心理師とクライエントという二人が,相談室でのカウンセラー−クライエント関係だけではなく,職場での上司と部下,さらには学校時代の同級生という関係であるといった具合に,公認心理師とクライエントが,二重あるいはそれ以上の関係を持ってしまう場合である。また,上述のような公認心理師やその関係者への利益誘導商取引及び物々交換も多重関係に含まれ,いずれも避けるべきである。

多重関係が生じている場合,様々な弊害が生まれる。通常の専門的関係以外の関係・役割が加わることによって,公認心理師一クライエント関係に必要な中立性客観性が侵され,利害の対立や個人的な意
見がからむ恐れがある
。自分がすでに知っている人物をクライエントとして受け入れた場合,公認心理師の側には,以前から持っている関係や知識や印象から,すでに「予断」や「偏見」をもっている可能性がある。クライエントの秘密や心理内的葛藤などを知ることによってクライエントを一層弱い立場に陥れる可能性がある一方,クライエント側から見ると,面接の場で話す事柄がどこまでクライエントのそれ以外の生活にかかわってくるか混乱し,十分な自己開示ができなくなる恐れがある。このように様々なリスクが生じることから,多重関係は問題とされ禁じられている。

性的多重関係を含む多重関係の問題は,心理学における職業倫理的問題として最も多い問題であることが知られている。クライエントとの間の
性的関係は,クライエントの側にしばしば精神医学的問題を引き起こすことが報告されており,重大な倫理違反である。

しかし,性的多重関係と非性的多重関係は連続線上にあり,質的に異なるものではない。性的多重関係の問題が生じた当事者間には,性的多重関係の前に様々な非性的多重関係あるいは様々な境界越え行動
(例えば,心理職が自身の個人的事柄について話をする。)が行われていたことが示されている。したがって,非性的多重関係を避けることが性的多重関係の防止につながると言える。

『公認心理師現任者講習会テキスト』(金剛出版)より