【オリジナル問題】

1.向精神薬は,その適応となる疾患別に,抗うつ薬,抗不安薬(睡眠薬としても用いられる),抗精神病薬,気分安定薬の主に4つのカテゴリーに分類されている。あるカテゴリーに属する薬剤は他のカテゴリーに対応する疾患には無効である。

2.薬物動態学とは,薬剤が身体に及ぼす影響に関するもので,薬剤が脳内のどのような蛋白分子(受容体)に作用して薬理学的効果を発現するのかという作用機序を明らかにする。

3.向精神薬による治療は,対症療法なので,薬剤の種類の選択は精神疾患の診断よりも治療の標的となる症状や状態像に基づいて行われることが多い。

4.向精神薬はプラセボ(偽薬)効果が小さく,治療関係は反映されないと言われている。

5.向精神薬の中には,ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬のように服薬後15〜30分で早く効果が現れる即効性のものと,抗精神病薬や抗うつ薬のように10〜14日間投与しないと効果の発現が明らかにならない遅発性のものとがある。

6.薬剤による精神障害には,治療や治療の目的で投与された薬剤によって惹起される場合と嗜好目的にて摂取された薬剤によって誘発される場合がある。

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『公認心理師試験出題基準 平成30年版』(一般社団法人 日本心理研修センター)より

ついでに,ブループリントの「22 精神疾患とその治療 (2)向精神薬をはじめとする薬剤による心身の変化」を網羅してみる。この色がブループリントに出ている用語。

1.誤り(☓)。

・抗うつ薬に属する選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSR I: selective serotonin reuptake inhibitor)は,うつ病のみならず,パニック障害強迫性障害等,神経症性障害にも適応がある。

・非定型抗精神病薬のいくつかは,統合失調症にも双極性障害にも適応がある。

・5で述べるような依存性のあるベンゾジアゼピン系のものを避けたいときは(中長期的に使用する場合等),幻覚・妄想がなくても表向き「統合失調症」として抗不安・催眠作用のある非定型抗精神病薬に置換する場合もある。

2.誤り(☓)。

・説明文は薬力学薬理作用のこと。薬物動態学(pharmacokinetics)とは,身体が薬剤に及ぼす影響を明らかにするもので,体内に摂取された薬剤は,吸収,分布,代謝,及び排泄の段階をたどる。

→ 覚え方:薬「力」学,身体「が」と,「か」で似ている

3.正しい(◯)。

・診断名ではなく症状に対して処方される。

4.誤り(☓)。

・プラセボ効果は大きく,治療関係が反映される。

5.正しい(◯)。

・即効性のものは,同等の効果の発現には増量が必要となる耐性や,それ無しに過ごせなくなる依存が形成されやすい。依存形成後には急に中止すると離脱症状が生じる危険性がある。

→ 中長期的に使用する場合,比較的依存を形成しにくい半減期の長い薬剤に置換したりする。

・遅発性のものは,効果よりも副作用の方が先に出る。

6.正しい(◯)。

薬剤性精神障害

治療や治療の目的で投与された薬剤に依って惹起される場合

・高齢者に投与された薬剤がせん妄(薬剤性せん妄)

・身体疾患の治療薬(抗がん剤,移植手術後のステロイド(副腎皮質ホルモン))投与によるせん妄など。

嗜好目的で摂取された薬剤に依って誘発される場合

・精神刺激薬による多幸感,精神運動興奮など交感神経系の過活動

 → 離脱期には疲労感,悪夢など。

<大まかなイメージ:7分類の場合>

1.抗精神病薬

幻覚妄想に関係するとされるドーパミン神経の中脳-辺縁系のD2受容体遮断(→ドーパミンを減らす)し効果を出す。

→ 同時に抗ドーパミン作用により,錐体外路症状(パーキンソン症状)が出現する。

副作用」は有害事象とも言う。(2018.9.6)

*医薬品の使用により生じた有害な反応かつ因果関係が否定できないものを「副作用」,因果関係を問わないあらゆる有害な反応を「有害事象」という(p. 496).

『公認心理師必携テキスト』(学研)

錐体外路症状

→ 急性ジストニア:首や上肢の筋肉のつっぱりや眼球上転

  遅発性ジストニア:舌や口唇,下顎の不随意運動や四肢の粗大な振戦

興奮を抑える作用から双極性障害認知症自閉症スペクトラムにも効果がある。

→ 抗うつ薬と同じく,抗コリン作用もあり,口渇,便秘,排尿障害も出現する。

2.抗うつ薬

セロトニンの再取り込みを阻害して,セロトニンを増やす。

・パニック障害,強迫性障害,社交不安障害にも効く(*「抗うつ」というのは誤解を招く)。

・即効性はなく効果が出るのに2〜4週間かかる。逆に副作用(胃腸症状)などは早期にみられる。

・副交感神経にも働いてしまう。アセチルコリンと結合することで,抗コリン作用(口渇,便秘,排尿障害等)が起こる。

3-4.抗不安薬・ベンゾジアゼピン系睡眠薬

・リラックスすると眠くなる感じのイメージ。

→ 筋弛緩作用や抗けいれん作用(てんかん)を止める作用もある。

・【GABA受容体+塩素イオンチャンネル+ベンゾジアゼピン系受容体】がドーナッツ形で1セットとなっている(GABA-ベンゾジアゼピン受容体複合体)。そこに薬物が加わると,ドーナッツの穴の間を塩素イオンが通過し,大脳辺縁系の神経活動を抑制する。

GABA(抑制系の神経伝達物質)

→ ベンゾジアゼピン系受容体にだけ作用する睡眠薬が開発されてきているが,不安で眠れない人とかにはイマイチなため,どうも不眠の多くは不安から来ているのでは説あり。

・「ゆる」むことから来る,過鎮静,ふらつき(→老人の転倒,車の運転能力低下等)。

5.気分安定薬

双極性障害の気分の安定化に使われる(リチウム)。

→ リチウム以外の気分安定薬(カルバマゼピン,バルブロ酸,ラモトリギン)はGABAに働きかけ神経細胞の過剰興奮を抑えるため抗てんかん薬でもある。

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<てんかん>DSM-5にはない。ICD-10にある。
 てんかんは脳の神経細胞の異常な電気活動(電気発射)が脳全体に拡がるてんかん発作を繰り返し起こす病気であって,乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性があり,有病率は0.5〜0.8%(日本で60〜100万人)である。

 脳腫瘍や頭部外傷後遺症など明らかな原因がある場合を症候性てんかん,原因不明の場合を特発性てんかんという。3分の2から4分の3の患者は発作が抗てんかん薬により抑制され通常の社会生活を支障なく送れるが,一部は発作抑制困難な難治性てんかんをもつ。抗てんかん薬治療以外に外科治療もある。

・原因明らか → 症候性てんかん

・原因不明  → 特発性てんかん

 てんかん発作の症状は異常な電気活動(電気発射)の部位と拡がりによって異なる。意識障害を伴わないものを単純発作,伴うものを複雑発作,脳の一部でとどまるものを部分発作,脳全体におよぶものを全般性発作というが,単純部分発作では後頭葉の視覚野で起こればがチカチカ見える,手の領域の運動野(前頭葉の中心前回)で起これば手がピクピク動く,側頭葉で起これば前胸部違和感や既視感(Deia-vu)などの自覚症状を訴える。全般性発作では意識を消失し動作が止まって応答がなくなる,倒れて全身を痙寧させるなどの症状が出現する。体の一部あるいは全体が一瞬ピクンと動くミオクロニー発作,突然体の力が抜けてパタンと倒れる脱力発作,手足や口をもそもそと動かす自動症などの発作もある。

・意識障害伴わない → 単純発作

・意識障害伴う   → 複雑発作

・脳の一部 → 部分発作

・脳全体  → 全般性発作

 成人期以降に発症するてんかんで最も多いものは複雑部分発作(側頭葉てんかん)で,発作中意識障害があるが発作前にやっていた行為(運転など)をそのまま遂行したりすることもある。引き続き全般性発作を発現することもある。脳波検査,MRI,必要な場合は脳波・画像同時記憶などを行い診断する。抗てんかん薬調整による発作抑制が第一であるが,治療継続やステイグマ(社会的偏見)への対処など心理支援が必要である。

『公認心理師現任者講習会テキスト』より

*脳波計には棘波(きょくは)・鋭波が観察される。

*極度のストレスが原因ではない。

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・リチウムは即効性がない。

→ 重い躁状態には気分安定効果がある抗精神病薬(オランザピン,アリプラゾール)を使う。

*リチウムは中毒症状(悪心,振戦,けいれん,不整脈など)や腎障害をさけるため血中濃度の定期的な評価が必要。

6.抗認知症薬

・コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬が使用できる。

・あくまでも認知機能の低下の進行を遅らせることが主な作用。

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<認知症:神経認知症群>
 記憶などの認知機能と生活機能が障害され,生活に支障があるが自立生活可能である状態を軽度認知障害(MCI),自立生活困難な程度に低下している状態を認知症とする。

→ 自立生活の可否で分かれる

 認知症における認知機能障害は「中核症状」と呼ばれ,(雑性注意,⊆孫垉’宗き3惱と記憶,じ生譟きッ粒弌Ρ親亜き社会的認知の6領域で分類されている。

→ こちらが中核症状

 認知症にともなう行動・心理症状(BPSD)は「周辺症状」とよばれ,不眠,気分障害(抑うつ・多幸・強度の不安),幻覚(幻視・幻聴)・妄想(物取られ妄想,被害関係妄想)などがしばしばみられる。

→ 幻覚・妄想は周辺症状

→ 中核症状の悪化と周辺症状の出現・悪化は必ずしも一致しない。認知症自体は重度でも,周辺症状がほとんど出現せず介護負担が軽い場合も,逆に初期の認知症であるが周辺症状が重度で精神科病院での管理を必要とする場合もある。

四大認知症とは,アルツハイマー型レビー小体型前頭側頭型血管性である。

→ 他にもあるがというところ。

前三者は神経変性が主たる原因であり,血管性は脳血管障害(脳梗塞・脳出血)が原因の後遺症と考えてよい。

認知症の症状は脳障害部位によって異なる。

アルツハイマー型認知症では海馬,側頭葉,頭頂葉が先に障害されその後全般性に進行するので記憶障害見当識障害が初期から出現するが言語機能感覚運動統合機能は後期まで維持される。

レビー小体型パーキンソン症候群(必発ではない)と波動性の認知障害,幻視,薬剤過敏性,自律神経症状などが特徴であるが,アルツハイマー型では障害されない後頭葉機能障害があり,幻覚の出現と関連している。

前頭側頭型の代表であるPick病では前頭葉障害のため万引きなどの衝動制御障害や人格変化を来す。側頭葉障害が目立つ場合は言語機能に影響し,失語流暢性障害が顕著となる場合もある

『公認心理師現任者講習会テキスト』より

<オマケ:高齢者向け心理検査>

HDSーR(長谷川式認知症スケール)
・作者:長谷川和夫
・全9項目
20点以下 / 30点中(*重症度の判定はない)
・言語性 
・スクリーニング用

MMSE(ミニメンタルステートエグザミネイション)
・作者:Folstein(フォルステイン)
・全11項目
23点以下(軽度),14点以下(重度)/ 30点中
・言語性+動作性
・スクリーニング用
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7.精神刺激薬

ドーパミンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで,中枢興奮作用や覚醒作用がある。

ナルコレプシー注意欠如多動症に使われる。

・メチルフェニデート(商品名:リタリン)は依存性が高い(ほとんど覚せい剤)。処方は登録制。

→ ナルコレプシー

→ ADHDにも効果があるが保険適用外

・メチルフェニデート(商品名:コンサータ)は効果は12時間持続(午後は飲む必要なし)。処方は登録制。

→ ADHD

【注意】
 ◯◯薬が◯◯分類以外に使われている場合もあるので,「幻覚・妄想がないのに何で抗精神病薬を飲んでいるのか」とかならないように気をつける必要がある(抗精神病薬には興奮を抑える作用があり,それで使っている場合もある)。