【オリジナル問題】

以下の文章は正しいか誤っているか。

1.長時間労働や仕事のストレスなどの過重労働により脳・心臓疾患を発症し,労災が請求される事態において,厚生労働省は「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(1995年)という通達を出した。

2.「事業場における労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2006)では「心の健康づくり計画」に基づき,「セルフケア」(労働者自身によるケア),「ラインによるケア」(管理監督者によるケア),「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」,「事業場外資源によるケア」という4つのケアを継続的かつ計画的に実施しすることとされた。

3.過労死等防止対策推進法(2014年)では過労死等を「 1)業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡(2)若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡∨瑤蓮1)これらの脳血管疾患(2)若しくは心臓疾患(3)若しくは精神障害」と定義している。

4.男女機会均等法(2007年)第11条ではセクシャルハラスメント対策として使用者による雇用管理上必要な措置を義務付けている。

5.「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引」(2004年)は職場復帰支援を3つのステップに分け,円滑な職場復帰を支援するために事業者(産業保健スタッフ,管理監督者を含む。)によって行われることが望ましい事項を示している。


『公認心理師現任者講習会テキスト』(金剛出版)より




『公認心理師現任者講習会テキスト』(2018)には,労働者の心の健康に関する法令や指針を理解するためのチェックリストが挙げられている(p.122)。

□ 職場復帰支援について概説できる。
□ ストレスチェック制度について概説できる。
□ 過重労働対策について概説できる。


この内,ストレスチェック制度についてはまとめたが,他の項目についてはまとめていないので,ここでまとめておく。

1.正しい(◯)。

認定基準の1つに「長期間の過重労働」が挙げられている。
・長時間の過重業務の判断
 発症前1ヶ月間におおむね100時間(直近の短期大負荷)
 → 発症前2ヶ月〜6ヶ月間にわたって1ヶ月当たりおおむね80時間(ちょっと前の長期中負荷)

2.正しい(◯)。

3.正しい(◯)。

過労死等の防止のための大綱
を定めなければならないとされている。

4.正しい(◯)。

・パワハラについては,厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル」(2016年,第2版)の中でパワーハラスメントに対する7つの取り組みの手順等が示されている。

<ハラスメント>

セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ。以下,セクハラ)とは,相手の意に反する・望まない性的言動である。性的要求に拒否・抵抗したため解雇,降格,減給等の不利益を受ける「対価型」と,性的言動により就業環境が害される「環境型」がある。1997(平成9)年の均等法の改正で,セクハラに関する規定が盛り込まれ(第21条),2007(平成19)年の改正では,被害者が女性に限定されなくなるとともに,事業者に,.札ハラには厳正に対処する等の方針の明確化およびその周知・啓発,∩蠱未鳳じ適切に対応するための体制の整備,セクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応などが課せられた。

一方,パワー・ハラスメント(以下,パワハラ)とは,権力や地位等を利用していじめや嫌がらせを行うことであるが,パワハラに関する法的規定はない。パワハラは2002年に作られた和製英語であり,大学の教官等によって行われるいわゆるアカデミック・ハラスメント(アカハラ)等を含めて,モラル・ハラスメント(moralharassment)と呼ばれることもある。

また,妊娠した女性に対する嫌がらせ,退職の強要,降格などのマタニティー・ハラスメント(マタハラ)が問題にされることがあるが,均等法第9条で,―性労働者の婚姻,妊娠出産を退職理由として予定する定めをすること,⊇性労働者の婚姻を理由として解雇すること,女性労働者が産休を請求したこと等を理由として解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないことが定められている。

セクハラやパワハラを受けた労働者にメンタル面での問題が生じやすいといわれており,厚生労働省は,「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(1999年)を補足するため,「セクハラによる精神障害等による業務上外の認定基準」(2005年),「上司の『いじめ」による精神障害等による業務上外の認定基準」(2008年)を示している(pp. 202-3)。

5.誤り(☓)。3つのステップではなく5つのステップに分けている。

2004年,厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引き」を示した。この中で職場復帰支援の段階を,

第1ステップ(病気休業開始および休業中のケア),

第2ステップ(主治医による職場復帰可能の判断),

第3ステップ(職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成),

第4ステップ(最終的な職場復帰の決定),

第5ステップ(職場復帰後のフオローアツプ)

に分けて,それぞれの段階で事業者(産業保健スタッフや管理監督者等)が行うべきことを示している(p. 196)。

『関係行政論』(遠見書房)より

より詳しくは,

病気休業開始及び休業中のケア(診断書+休業入)
・労働者から管理監督者に主治医による診断書(病気休業診断書)が提出され休業が開始
・療養に専念できるような情報提供(傷病手当金などの経済的な保障など)

主治医による職場復帰可能の判断(本人が復帰希望)
・休業中の労働者から事業者に対し、職場復帰の意思が伝えられると、事業者は労働者に対して主治医による職場復帰が可能という判断が記された診断書の提出を求める。

*ただし,必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らない。このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要となる。

職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成(職場が復帰プランを作成)
安全でスムーズな職場復帰を支援するため、最終的な決定の前段階として、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰ができるかを適切に判断し、職場復帰を支援するための具体的プラン(職場復帰支援プラン)を作成する。この具体的プランの作成にあたっては、事業場内産業保健スタッフ等を中心に、管理監督者(*職場の上司)、休職中の労働者の間でよく連携しながら進める。

最終的な職場復帰の決定(復帰の決定)
・第3 ステップを踏まえて、事業者による最終的な職場復帰の決定を行う。
産業医等は「職場復帰に関する意見書」等を作成(就業上の配慮等)

職場復帰後のフォローアップ(フォローアップ)
・職場復帰後は、管理監督者による観察と支援のほか、事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップを実施し、適宜、職場復帰支援プランの評価や見直しを行う。
・職場復帰をする労働者を受け入れる職場の管理監督者や同僚等に過度の負担がかかることのないよう配慮