【問題86】

「自殺対策基本法 [平成18年策定] 」の基本理念に関する次の記述のうち,正しいものに○,誤っているものに×をつけた場合,下のa〜eの組み合わせの中から,正しいものを一つ選びなさい。

A.自殺の要因として,社会的要因よりも,個人の心理的問題を中心に取りあげて,対策を進める。

B.自殺対策は,刻々と変化する実態に左右されないよう,精神保健的観点から一貫性をもって行う。

C.自殺対策は,自殺発生の予防と発生時の危機への対応の2段階とする。

D.自殺対策は,国および地方公共団体,医療機関,事業主,学校に限らず, 民間団体や関係者とも緊密な連携を取りながら実施する。

 



 近年,我が国において自殺による死亡者が高水準で推移しており,臨床心理士が「自殺対策基本法[平成18年策定] 」の基本理念を正確に認識しておくことが必要なために,出題された問題である。

A 誤り(×)。自殺対策基本法の第2条には「自殺対策は,自殺が個人的な問題としてのみとらえるべきではなく,その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ,社会的な取り組みとして実施されなければならない」と規定されている。

B 誤り(×)。同法第2条第2項には「自殺対策は,自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ,単に精神保健的観点からのみならず,自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない」とある。

C 誤り(×)。この法律の第2条第3項には「自殺対策は,自殺の事前予防,自殺発生の危機への対応及び自殺が発生した後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない」と規定されているので,2段階というのは明らかに誤りである。

D 正しい(○)。同法第2条第4項には「自殺対策は,国,地方公共団体,医療機関,事業主,学校,自殺の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係する者の相互の密接な連携の下に実施されなければならない」と規定されているので,この表現は正しい。

【橋口(2018)追記】
2016(平成28)年(上の問題は平成23年のもの)に自殺対策基本法が改正され,自殺対策は「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」を目指し,「生きることの包括的な支援」として,「保健,医療,福祉,教育,労働その他の関連施策と有機的な連携が図られ,総合的に実施」されなければならないことが新たに明示されるとともに,地域の実態に合わせたきめ細やかな自殺対策を打ち立てるため,全ての都道府県,市町村に自殺対策計画の策定が義務付けられた(p. 89)。

『関係行政論』(遠見書房)より