次の事例Kを読んで,問題89の設問に答えなさい。

【事例K】
 学校臨床心理士(スクールカウンセラー)が勤務する中学校に在籍する, Kさんという2年生の男子生徒は,髪を金色に染めたり,制服のズボンを太くしたりするなどの校則に違反する服装で登校し,授業中に騒いで授業を妨害して,しばしば教師の注意を受けている。最近では,教師が注意すると, Kさんは暴言を吐いて学校を飛び出すようになり,他の中学校の生徒と一緒に公園でたむろして喫煙している様子を見たと,近所の方から連絡が入ることもあった。中学校ではKさんの指導に苦慮しており,学校臨床心理士を交えて, Kさんの指導方針について検討していた。そんなある日, Kさんが公園で喫煙しているところを近所の方に注意された際に,殴る蹴るの暴行を加えて傷害を負わせるという事件を起こした。傷害の程度は不明であるが,通行人によって警察に通報されたとのことである。

 Kさんは中学2年生で,年齢は13歳か14歳のどちらかである。Kさんの今後の経過に関する次の記述のうち,正しいものに○,誤っているものに×をつけた場合,下のa〜eの組み合わせの中から,正しいものを一つ選びなさい。

A.Kさんが13歳であった場合,触法少年であるので,警察官はまず児童相談所に通告することになるが, Kさんが傷害を負わせた被害者が死亡した場合には,警察官は家庭裁判所に直接事件を送致することになる。

B.Kさんが14歳であった場合,犯罪少年であるので,警察官はKさんの事件をまず検察官に送致し,検察官が家庭裁判所に送致することになる。

C.Kさんが13歳であった場合,家庭裁判所の審判で少年院送致となる可能性はない。

D.Kさんが14歳であった場合,家庭裁判所の審判で検察官送致となる可能性はない。




 少年事件がどのように扱われるのかについて,スクールカウンセラー等の青少年に関する相談に携わる臨床心理士は正確な知識を有している必要がある。本問は,14歳未満の触法少年14歳以上の犯罪少年との取扱いの違いについての理解の有無を問うものである。

 13歳と14歳との取扱いの違いについての知識は,中学校に勤務するカウンセラーには必要不可欠である。また,平成12年の少年法改正により刑事処分可能年齢が引き下げられたこと,平成19年の少年法改正により触法少年に係る事件の調査手続きが整備され,少年院送致の下限年齢が引き下げられたことも,非行少年の処遇に関する大きな変更点であるので,非行問題を扱う臨床心理士にはぜひ知っておいて欲しい知識である。

A 誤り(×)。14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした触法少年については,児童福祉法上の措置が優先され,家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り審判に付すことができる。したがって,警察官はまず児童相談所に通告する。

 平成19年の少年法改正により,一定の重大な触法行為(傷害致死事件は該当する)については,警察官は児童相談所に事件を送致しなければならず,送致を受けた都道府県知事又は児童相談所は,原則として,事件を家庭裁判所に送致しなければならないとされた。児童福祉機関先議主義を否定するものではない。(少年法3条1項2号,3条2項,6条の6,6条の7)

【橋口(2018)追記】
(軽めの場合)児童相談所に通告。:児相から家裁に行かない場合がある

 → 全件送致主義(家裁送り)は「犯罪」少年にのみ該当する。

(重めの場合)児童相談所に送致,そして家庭裁判所に送致。

 → 家裁送りになったあとは,犯罪少年と同じ行程となる(少年院,検察官送致もあり)。

 → しかし10歳くらいとかであれば家庭裁判所の保護処分で少年院送りがない

B 正しい(○)。14歳以上で罪を犯した犯罪少年については,警察官は,

罰金以下の刑に当たる犯罪の被疑事件は家庭裁判所に送致し,

それ以外(禁錮以上?!)の刑に当たる犯罪の被疑事件は検察官に送致する(→そして家裁に送致する)。

本事件は傷害事件であるので検察官に送致する。検察官は,少年の被疑事件については家庭裁判所に送致することが義務付けられている(全件送致主義)。(少年法41条,42条1項)

【橋口(2018)追記】
(軽めの場合)家庭裁判所に送致。

(重い場合)検察官に送致(*)。→ してから家庭裁判所 (→ 審判次第でまた検察官(逆送))

 懲役 > 禁錮 > 罰金

(*)犯行時14歳以上の少年について,その非行歴,心身の成熟度,性格,事件の内容などから,保護処分よりも,刑事裁判によって処罰するのが相当と判断された場合には,事件を検察官に送致することがあります

 なお,少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させ,犯行時に16歳以上であった場合には,原則として,事件を検察官に送致しなければならないとされています(いわゆる原則検送制度)。検察官は,検察官送致がされた場合には,原則として,少年を地方裁判所又は簡易裁判所に起訴しなければなりません。『裁判所HP』より

C 誤り(×)。平成19年の少年法改正により, 14歳に満たない少年に係る事件についても,特に必要と認める場合に限り,少年院送致(*)が可能となった。少年院送致の下限年齢は,少年院法により,おおむね12歳以上とされている。(少年法24条1項ただし書き)

(*)再非行のおそれが強く,社会内での更生が難しい場合には,少年院に収容して矯正(きょうせい)教育を受けさせます。少年院では,再び非行に走ることのないように,少年に反省を深めさせるとともに,謝罪の気持ちを持つように促し,併せて規則正しい生活習慣を身に付けさせ,教科教育,職業指導をするなど,全般的な指導を行います。『裁判所HP』より

→ 少年院は3つある保護処分の内の1つ

保護観察更生保護法,社会内処遇(通所),保護観察所(法務省設置法),保護観察官(公務員),保護司(一般人)]

児童自立支援施設送致児童福祉法,半社会内処遇(入所または通所),心理療法担当職員]

少年院送致少年院法,社会外処遇(入所),法務教官(公務員))

D 誤り(×)。平成12年の少年法改正により,少年法20条から,ただし書きが削除され,刑事処分可能年齢が引き下げられた。現行の少年法には,検察官送致決定が許される少年の年齢についての規定はないので,刑事責任を問うことができる犯行時14歳以上の場合であれば検察官送致決定をなし得るとされている。