【問題94】

 Nさんの特別支援学級への入級を検討する際に留意する点に関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけた場合,下のa〜eの組み合わせの中から,正しいものを一つ選びなさい。

A. 特別支援学級への入級の決定は,保護者・本人の意見によって最終的に決まるので,保護者・本人の希望を学校臨床心理士が聞き取って,学校に伝えることが重要である。

B. 保護者が特別支援学級の担当教員と話し合ったり,いくつかの学級を見学したりするなど,十分な情報を得る機会をもつことが重要である。

C. 入級は,学校や教育委員会に設置された教育支援に関する委員会が決定して保護者に通知するので,保護者には,学校や教育委員会の決めた方針に従ってもらうことが重要である。

D. 特別支援学級に一度入級すると,卒業までは在籍学級の変更をすることは難しいので,入級にあたってはその必要性を慎重に検討することが重要である。





 発達障害やその周辺の子どもたちについて,特別支援学級の入級が検討されることが増えている。その場合の方針については,平成23年8月の障害者基本法の改正(*)などを受け,整えられつつある。本問題は,学校臨床心理士(スクールカウンセラー)が現場で出会う特別支援教育を視野においた支援について,具体的に求められる知識,および学校心理臨床において臨床心理士に期待される基本的態度について問う事例問題である。まず問題94では,特別支援学級に入級する際の制度についての基本的な理解を問うている。

A 誤り(×)。子どもの就学先を決めるにあたっては,「本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ,本人・保護者の意見を最大限尊重し,本人・保護者と市町村教育委員会,学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし,最終的には市町村教育委員会が決定することが適当である」※となっている。「保護者・本人の意見によって決まる」は,誤りである。

B 正しい(○)。A項目の解説で示されたように,本人・保護者に対し十分情報提供を行うことは重要である。特別支援学級での学習の具体的な様子がわからなければ,保護者は判断を行うことができない。こうした,就学先に関する情報提供と相談の機会を充実させることは,非常に重要である。

C 誤り(×)。A項目の解説にあるように,最終的な判断は教育委員会であるにしても,決定の過程で本人・保護者の意見が最大限尊重されることが重要である。したがって,「学校や委員会が決定して通知」という部分は誤りである。

D 誤り(×)。「就学時に決定した『学びの場』は固定したものではなく,それぞれの児童生徒の発達の程度,適応の状況等を勘案しながら柔軟に転学ができることを,すべての関係者の共通理解とすることが重要である」(※)となっている。「卒業までは在籍学級の変更をすることは難しい」は,誤りである。

※参照:文部科学省「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」平成24年度7月23日初等中等教育分科会2.就学相談・就学先決定の在り方について

(*)【橋口(2018)追記】
1.障害と障害者とは
 障害者基本法第2条において,障害と障害者は,△里茲Δ膨蟲舛気譴討い襦

 身体障害知的障害精神障害発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」

社会的障壁:障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。

2.インクルーシブ教育
 障害児支援関連で,第17条に「療育」という項目が新設された。第16条では,教育の項目に,いわゆるインクルーシブ教育が書き込まれている。

(療育)第17条 国及び地方公共団体は, 障害者である子どもが可能な限りその身近な場所において療育その他これに関連する支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は,療育に関し,研究,開発及び普及の促進専門的知識又は技能を有する職員の育成その他の環境の整備を促進しなければならない。

(教育)第16条 国及び地方公共団体は,障害者が,その年齢及び能力に応じ,かつ,その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため,可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配盧しつつ,教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

『関係行政論』(遠見書房)より